須佐之男命(すさのおのみこと)

【八岐大蛇を退治した、高天原から追放された荒ぶる神】

概要
八岐大蛇退治で有名な須佐之男命(すさのおのみこと)。神様としては、八坂(祇園、弥栄)、津島(天王)、氷川と名の付く神社の祭神として祀られて、霊威、人気ランキングともに古くからトップクラスに位置している。

神話の須佐之男命の姿は、なかなか複雑で、ある時は乱暴者になったり、あるときは英雄になったりして、多様な性格を表している。それゆえ変化にとんだ謎の多い神といわれ、同時に人間的で俗っぽい雰囲気を感じさせる神でもある。

須佐之男命は最初、神の住む高天原の秩序を破壊する乱暴者として登場し、世の中の「悪しきものの元祖」といった悪名を与えられている。父、イザナギから海原(地上空間)の支配を命じられたが、その責務を放棄して母神イザナミが恋しいと泣き叫び、そのあまりの激しさに地上の樹木をからし、川、海をことごとく干上がれせ、世界に悪神をはびこらせ災いを招いてしまい、そのため父神イザナギの怒りをかい、地上から追放される。

そのあとも悪行は続き、高天原に昇って、姉神の天照大神の地位を脅かす。一時は誓約(うけい:神聖な占い)をし和解するが、やがて大神のつくった神聖な田を壊したり、神殿に糞をしたり、機屋に皮を剥いだ馬を投げ込んで機織り女を殺すなど、乱暴狼藉の限りを尽くし、それに恐れたアマテラスは天岩戸に隠れてしまった。

その結果、怒った高天原の神々によって罪の償いのしるしに髭と手足の爪をきられ、高天原から追放されてしまう。

その後、出雲へ降ったスサノオは今までの乱暴者から、弱気を助ける英雄的なイメージに変わっていく。八岐大蛇を退治して草薙剣(くさなぎ:天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)を得て天照大神に献上した。そして出雲の清地、須賀の宮処を定め、助けたクシナダヒメ(イナダヒメ命)と結婚する。

こうした出雲におけるスサノオの原像は豊穣をつかさどる農業神と考えられる。そもそもスサノオが対峙した八岐大蛇は、農業と深く関係する山や水などの自然の精霊の象徴であり、クシナダヒメ(イナダヒメ命)は美しい稲田を象徴する穀霊である。スサノオが大蛇(水神)を退治するというのは、水を制御して稲の無事の稔りをもたらすということを表している。

また、須佐之男命(すさのおのみこと)の妻となったクシナダヒメ(イナダヒメ命)の原像は、田植儀礼で田の神をもてなす巫女の役割の神格化と考えられ、「出雲風土記」には、農耕民の信仰する素朴な豊穣の守護神としての姿が伝承されている。スサノオには、そうした基本的な性格が備わっている。

また、須佐之男命は牛頭天王(ごずてんのう)と同一視されている。「天王さま」とは祭神の牛頭天王のことで、インドの祇園精舎の守護神、またあは新羅の牛頭山の神ともいわれる疫病除けの神である。この神は古くからスサノオと同一神と考えられてきた。その結びつきについて「備後国風土記」逸文の蘇民将来の伝承に、次に様な由来譚がある。

昔、貧乏な蘇民将来と裕福な巨旦将来という兄弟のところに、旅の途中の汚れた身なりの牛頭天王がやってきて泊めてほしいと頼むと、ケチな弟は冷たく追い払ったが、兄の蘇民将来は暖かく迎え手厚くもてなした。何年かの後、再び訪れた牛頭天王は、兄の蘇民将来に子孫代々疫病にかからないための茅の輪(疫病除けの呪符)を授けた。そのとき牛頭天王は「われはスサノオ尊なり」と名乗った。

また、須佐之男命も牛頭天王もどちらも大変荒ぶる神という点が共通し、さらにいえば、神話のなかでスサノオの疫神的性格にも共通性が求められる。つまり、高天原を追放されるとき長い髭や手足の爪を理られるが、これは穢れを落とす禊祓いと同じような意味をもつ一種の悪霊祓いの儀式であると考えられている。

そうした古代文化で重視されてきた魔除けの呪法を体現する存在であったことから、スサノオが疫病除けの守護神として信仰されることになったようである。

別名・別称
素戔男尊、素戔嗚尊、建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと、たてはやすさのおのみこと)、須佐乃袁尊、『出雲国風土記』では神須佐能袁命(かむすさのおのみこと)、須佐能乎命
神格
農業神、疫神(防災除疫の神)、冥府の神、荒ぶる神の祖
性別
男神
神徳
水難、火難、病難除去、五穀豊穣など、なお京都の八坂神社は、スサノオがクシナダヒメ(イナダヒメ命)との新婚の宮をつくったときに詠んだ「「八雲立つ(やくもたつ) 出雲八重垣(いずもやへがき) 妻籠みに(つまごみに) 八重垣作る(やえがきつくる) その八重垣を」(【古事記】天照大御神と須佐之男命~八俣遠呂地大蛇「須佐之男命のお手柄」)の歌にちなんで文学、各門じょうたつ、縁結びの神徳もある。
備考
須佐之男命(すさのおのみこと)を祭神とする神社は、明治まで牛頭天王社と呼ばれていたところが多く、京都の八坂神社なども、牛頭天王を祀ることから古くは祇園天神、祇園社とも呼ばれていた。全国に広がる八坂、津島社系の神社は二千六百五十一社にのぼる。

神社

八坂神社(京都市東山区祇園町:全国の八坂信仰の総本社)

氷川神社(埼玉県さいたま市高鼻町:氷川信仰の総本)
 氷川敬は関東に二百社余

津島神社(愛知県津島市神明町:津島信仰の総本社)
 津島系は全国に三千社

熊野本宮大社(和歌山県)

・日御崎神社(ひのみさき:島根県簸川郡大社町御崎)

須佐神社(島根県簸川郡佐田町宮内)

・その他全国の八坂(弥栄)、祇園、津島(天王)社、氷川神社系

など。

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