少名毘古那神(すくなびこなのかみ)

【常世の国からやってきた小人神、大国主神とともに国土経営に尽力】

概要
少名毘古那神(すくなびこなのかみ)は、海の彼方の常世の国から光り輝きながらやって来た小人神である。「古事記」では、天の羅摩船(かがみぶね:ガガイモの殻の船)に乗り蛾の皮を着て大国主神の前に現れた。そのとき、造化三神の一神のカミムスビ神が「私の小指の間から漏れこぼれ落ちた子です」といい、少名毘古那神に大国主神と義兄弟となり一緒に国づくりをするように命じた。

昔は薬神と書いてスクシノ神と呼んでいるが、薬師の崇敬した守護神という意味合いがあるのだろう。その薬神の代表的な存在といえるのが少名毘古那神(すくなびこなのかみ)で、古くから医薬神(医業、薬業の守護神)として知られている。

他にも酒造の神や温泉の神としての信仰もあり、いずれにせよ身体健康にかかわる霊力を発揮する神で、また病気平癒という薬師信仰との共通性から、神仏習合の祭にはその本位が薬師如来とされたりしている。

少名毘古那神は日本神話の中でも人気者であり、中世の【日本霊異記】の道場法師や近世の「御伽草子」の一寸法師などの「小さい子」のルーツとされる。性格は明るく、いたずら者でユーモラス。しかもゆたかな技術や知識を兼ね備えている。力ではなく持ち前の知恵を働かせて困難を見事に克服して見せるというヒーロー性も見逃せない。

多くの仕事をやり終えた少名毘古那神は、竿後に淡島で粟の茎にのぼり、その弾力で弾き飛ばされるようにして常世の国に渡ったとも、あるおは熊野の御崎から海を渡って常世の国に帰ったともいわれる。海に彼方からこちらの世界にやって来て、技術や文化を伝え、また常世の国に帰っていくという行動パターンは、高いから豊穣や富を運んでくる来訪神と重なる性格を示している。

また、少名毘古那神(すくなびこなのかみ)が、大国主神とやった国づくりの一番の仕事は、国土開発事業と農業技術や医療技術などの指導普及である。とりわけ少名毘古那神の中心的な業績は、その信仰にも反映されているように、文化的事業の一環として人々や家畜のために病気治療の方法を定めたことである。

酒造技術の普及もその一環で「酒は百薬の長」というように、古来、酒の消毒力や肉体を興奮させ生命力を高める働きは薬効として大変重視された。その霊妙な働きを人々に教えた神様というわけで、今日も製薬会社や北海道のビール会社など大事に祀られている。

また、温泉を初めて医療に用いたエピソードが「伊予国風土記」に、あるオオナムチ命(大国主神)が病気になったので、少名毘古那神が大分の早見の湯を地下樋を海底に通して運んで湯浴みさせると、やがて症状は回復して健康になった。このときに開いた湯が伊予国温郡の温泉(現在の愛媛県松山市の道後温泉)のもととなったという。

昔から温泉は「常世よりきたる水」と考えられていた。

この神の「小人」の原像には色んな説があるが、一つには、人間の罪や穢れを一身に引き受けてくれる人形(ひとがた)、形代(かたしろ)と結びつける説。もう一つは、昔は朝廷や貴族の使用人に「生きた人形」ともいえる小人(侏儒(ひきうど、しゅじゅ:背丈が並み外れて低い人・小さい子・矮人(わいじん:背丈が低く、からだの小さい人)がいたらしい。こういう小人が天皇や貴族の側に控えて穢れを吸い取る役割を果たしていた。これは少名毘古那神の身体健康守護の霊力に通じている。

これらの考え方からすれば、小さいものの神秘性=小さいものが穢れを吸い取るという信仰に、この神の原像を見ることがも可能である。

別名・別称
須久那美迦微、少彦名、少日子根
神格
穀物神、医薬神、酒造の神、温泉神
性別
男神
神徳
医薬、酒、温泉等に関わることから、万民の病難を救う霊力が心にあり、国土安穏、産業開発、漁業、航海守護、病難排除、縁結び、安産、育児守護など
備考
少名毘古那神(すくなびこなのかみ)は、中国の薬祖神である神農神と一緒にまつられて、医薬業関係者の厚い信仰を集めている。薬問屋が軒を連ねる大阪市中央区道修町の一角に小彦名神社がある。同社は、京都の五条天神の祭神の少名毘古那神を観請(かんじょう:神仏の来臨を願うこと)して神農神を併せて祀ったもので、薬屋や香具師(やし)の守護神とされている。祭日(十一月二十二、二十三日)には、疫病除けのお守りの張り子の虎の笹飾りが分布され、多くの参拝者でにぎわう。

少名毘古那神と神農神の結びつきは、比較的新しく江戸時代になる。そもそも神農神が薬祖神として日本で広く信仰されるようになったきっかけは、幕府の御薬園(薬草園)に祀られたことに始まる。それば民間の薬草問屋などに広がるなかで、古くからの日本の医薬神の少名毘古那神と一緒に祀られるようになった。

神社

酒列磯前神社(さかつらいそざき:茨城県磯崎町)

札幌神社(北海道神宮)札幌神社(北海道神宮)(札幌市中央区宮ヶ丘)

温泉神社(栃木県那須郡那須町湯本)

御嶽神社(長野県木曽郡王滝村)

大神神社(奈良県桜井市三輪町)

湯神社(愛媛県松山市道後湯之町)

洗磯前神社(茨城県東茨木郡大洗町)

・温泉神社(福島県いわき市常磐湯本町)

武蔵御嶽神社(むさしみたけ:東京都青梅市御岳山)

小彦名神社(大阪市中央区道修町)

・温泉神社(とうせんじんじゃ:兵庫県神戸市北区有馬町)

など。

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